近年、司法の現場で「付添犬(法廷犬)」という新たな取り組みが注目を集めています。法廷というと厳格で冷たいイメージを持つ方も多いかもしれませんが、そこに静かに寄り添う犬の存在が、人の心を支え、大きな役割を果たし始めています。この記事では、付添犬の役割や実際の運用、そして日本の現状と課題について詳しくご紹介します。
付添犬とは?
付添犬とは、裁判所や検察、警察の場面で、証言を行う被害者や証人、特に子どもやトラウマを抱えた方々に寄り添い、心理的な安心感を与えるために同伴される訓練された犬のことを指します。証人が話しやすい状態をつくることを目的に、静かにそばに寄り添い、過度な緊張や不安を和らげます。
どんなときに使われる?
- 性犯罪やDVなど、心理的負担の大きい証言の場面
- 子どもが証人となる場合
- PTSDや障がいを抱える証人の支援
特にアメリカでは早くから制度化されており、日本でも2020年以降、裁判所での活用が進んでいます。
求められる資質
| 能力 | 内容 |
|---|---|
| 落ち着き | 裁判所という緊張感のある空間で静かに待機できる |
| 指示への従順性 | ハンドラー(指導者)の指示に従える |
| 社会性 | 不特定多数の人がいる空間に慣れている |
| 安定した性格 | 急な音や動きにも過度に反応しない |
付添犬には、特別な訓練が必要です。単に人懐こい犬であれば良いというわけではありません。上記のような資質を持った犬が、セラピードッグや補助犬に準じたプログラムで訓練を受け、実務に就くことになります。
なぜ付添犬が必要なのか?
法廷での証言は、多くの被害者にとって再び心の傷を呼び起こす、非常にストレスの高い経験です。特に性犯罪や家庭内暴力など、深いトラウマを伴うケースでは、証言を行うこと自体が大きな負担となります。
そんなとき、そっと寄り添う犬がいるだけで、安心して自分の言葉を紡ぐことができるのです。付添犬は、言葉を使わずに「大丈夫だよ」と伝える存在なのです。
落ち着いて話せることで、被害者がより正確に、自分の記憶や経験を表現できるようになります。その結果、証言の信頼性が高まり、裁判の公正性の確保にもつながります。
主な課題
付添犬の導入には、いくつかの課題も存在します。
- 動物アレルギーや宗教的理由による反対
- 犬が法廷内にいることへの違和感
- 専門訓練を受けた犬やハンドラー(付添犬の飼い主)の不足
- 裁判所ごとに異なる対応
とはいえ、被害者支援の重要性が高まる中で、付添犬の存在は今後ますます必要とされるでしょう。司法と動物福祉が手を取り合いながら進む未来が、少しずつ形になりつつあります。
おわりに
法廷においても、人間らしい優しさが求められる時代になっています。言葉ではなく、存在そのもので安心を届ける付添犬の役割は、これからの司法においてますます重要な存在となっていくことでしょう。
私たちが普段接している犬たちが、こうして誰かの「心の支え」となり、社会の一員として活躍していることを知ると、動物たちの可能性の大きさに改めて気づかされます。ペットと暮らす一人ひとりが、こうした取り組みに関心を持ち、支えていくこともまた、未来の優しい司法の実現につながるのではないでしょうか。


